人間の本質的な強さ、そしてひとりの人間が持つ磁力、
そうしたものが、3時間の長尺ドキュメンタリーという形式も効を奏し
観ている側も居住まいを正さざるを得ないような切迫感をともなって描かれている。
それがこの映画の主人公・鳳鳴さんの持って生まれたものなのか、
文革時代の体制に翻弄された体験から後天的に獲得されたものなのか
あるいはその両方なのかはわからないが、
監督・王兵が語るように、
http://www.cinema.janjan.jp/0811/0810100174/1.php
映画制作における表層的な小手先のテクニックに寄りかかることが
いかに小さな自己満足に過ぎないか、逆に言えば、人間が人間を動かす力の
根源的な強さが映画というメディアを昇華させる要素としてどれだけ重要なものなのかが
対比的に浮き彫りになってくるようだ。
王兵が鳳鳴さんと出会うことにより、また、それを映像作品に結実させる過程で、
いかに大きな果実を得たのかがリアリティを持って深く伝わってくる。
その一方で、今目の前で自分の得つつある感動を、冷静に、そして徐々に徐々に染み込ませるように
画面に定着させる筆運びには凄みがある。今後ももちろん要注目だ。
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